なぜ個人の株式投資は今後ますます困難になるのか?
おはようございます。
資産運用学教授の長岐(ながき)です。
私は、銀行員だった経験に基づき、お金に関する基本的なことを分かりやすく、お伝えしていきます。
株式投資の前に考えるべきこと
前号で、定期預金に預けるだけのまとまった金額のお金があるのなら他の金融商品でお金を増やすことを考えるのが銀行員のホンネだと言いました。
では、お金を増やすための、他の金融商品とはいったい何なのでしょう?
多くの人が思いつくのが株式投資です。
定期預金を全額おろして株を買ってみよう。
株主優待のメリットも増えているらしいし、なんとなく株式投資はカッコいいし・・・そんなふうに考える方もいらっしゃるでしょう。
ですが、株式投資を始める前に、一度立ち止まって考えてほしいことがあります。
あなたのまわりに「株で大儲けした!」という人は本当にいますか?
銀行員は、業務上、多くの顧客の資産状況を把握しています。
中には「株が大金に化けた!」「濡れ手に粟で大儲けした!」なんていう話も確かにありました。
ただ、それは過去の話です。
株で儲けたという人のほとんどは、高度成長期の右肩上がりの日本社会の中で働いてきた世代の人たちか、あるいは勤めていた会社が株式市場に上場したことによってそれまでに積み立てていた自社株によって上場益を得た人です。
もしくは十数年前のITバブル期に投資に成功した一部の人たちでしょう。
株式投資での成功が困難な理由とは?
では、今は、そして今後はどうなっていくでしょう。
現在、今後急成長を見込める市場はほとんどないと言われています。
たまたま持っているだけで、勝手に値が上がっていくというような幸運に出会うことは期待できそうにありません。
そういった社会状況以外にも、個人が株式投資で成功することを困難にしている原因があります。
それは、巨大な金額を動かす機関投資家の存在と、人工知能によるシステムトレーディングの台頭です。
株式投資では、動かすお金が大きければ大きいほど有利に取り引きを行うことができます。個人投資家からお金を預かって、それを運用するプロの機関投資家は、一度に数十億から数百億円という巨額のお金を動かします。
同じ舞台で、個人が数万円、数十万円という単位で戦って勝ち続けることが非常に難しいことはおわかりいただけるでしょう。
また最近主流になってきた人工知能によるシステムトレーディングが、やはり個人投資家の前にたちはだかります。
この人工知能は急速に発達していて、将棋やチェスでもプロの棋士との対局で人工知能の方が勝つことが増えています。
株式投資においても、人間よりも豊富な情報量と素早い計算力を武器にかなり正確に相場を判断できますし、余計な感情も入らないので冷静で的確な選択を行うことができます。常に相場をチェックして、上げ下げの局面では多いときでは1秒間に500回もの売り買いをすることも可能です。
それによって相場は一気に動き、急上昇したり急下降したりするので手動の操作でその動きについていくのは不可能です。
このような状況の中、個人投資家が本業として別の仕事をしながら片手間で株をやって儲けるのは、今となっては至難の業なのです。
無視できない“大損”のリスク
株には、別の怖さもあります。それは損が拡大しやすいということです。
みなさんも、実際によく耳にするのは「株で儲けた」話より「株で大損してしまった!」という話ではないでしょうか。
株の世界には「天井売らず、底買わず」という格言があります。
これは株ではいちばん高値で売ることも、底値で買うこともそのタイミングをつかむことはとても難しいということを表しています。
誰でもそうですが、上がっている時にはまだまだ上がるだろうと思ってしまいます。天井は、いつも通り過ぎてから気づくものなのです。
同様に底も、もう少し下がったら、もう少し下がったら・・と思っているうちに底を打って上昇し、後になって「あのときが底だった」と知ることになります。
もう一つ別の格言もあります。
「半値、八掛け、二割引きで底を打つ」
これは、相場が下がるときにはまず半値になり、さらにそこから八掛けになり、ついにはそこから二割引きになってしまうと言う意味です。
いったん相場が下がり始めると、まるで崖から落ちるように一気に高値の頃の3分の一くらいにまで落ちてしまうものなのです。
この対処として、最初から「損切りライン」を決めておくのが鉄則だと言われていますが、徹底してそれを見極めて正しく判断するのはプロのトレーダーであっても難しいことです。
反対に株価がどんどん上がっている場合にも、株の世界では賢い運用スキルとして「2割の利益が出たら、利益を確定しましょう」と言われています。
ですが誰しも、上がっている局面ではこのままどんどん上がっていくようなイメージを持ってしまい、つい欲が出てしまい、売るタイミングを外してしまいます。
本業では別の仕事をしながら日々動きのある市場を常にチェックしてデイトレーディングをするのは、個人投資家にとってはかなり困難なことです。
そわそわして本業に身が入らないなんてことも起こってきます。
挙句の果てには、ついずるずるとお金をつぎ込んでしまい、気がつけば増やすどころか全部使い果たしてしまっていたなんてことも起こり得ます。
こうして考えると、株式投資にはリスクがいっぱいであることがわかります。
リスクが多く、かつ、増やすことも難しい株式投資。
お金を効率よく増やす手段として株式投資を選ぶ銀行員は、今ではほとんどいません。
*この記事以外にもコラムをアップしています。その他コラムはインベスターズギルドのコラムサイトでご覧ください。http://investorsguild.jp/column/equity-investment/
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