ホントはアヤシイ投資信託のからくり

おはようございます。
資産運用学教授の長岐(ながき)です。
私は、銀行員だった経験に基づき、お金に関する基本的なことを分かりやすく、お伝えしていきます。

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“投資信託”で誰が得をし、誰が損をするのか

定期預金ではお金を増やせない。

株式投資はリスクが多く、しかも安定してお金を増やすことはできない。

となると、何がいったいおトクなの?

 

そう考えた時、

「そう言えば、今年から始まったNISAという制度があったな。早速口座を開いて投資信託を始めよう」と考える方が多いようで、私もたくさんの方から相談を受けています。

 

ですが、投資信託という金融商品は、私に言わせれば「お金を増やすのではなく、減らすためにつくられたもの」なんですよ。

「そんなバカな・・・」と思われるかもしれませんが、少し私の説明に耳を傾けてください。

 

そもそも投資信託というのは、成り立ちの経緯からしてかなりアヤシイのです。

バブルが崩壊した1990年代半ば以降、個人の投資家はバブル崩壊時の失敗を繰り返すことを恐れ、株や金融商品への興味や関心を失ってしまいました。

日本株の在庫がたくさん余ってしまい、市場には活気がなく、日本経済は沈む一方です。そこで、余っている日本株を回転させるために考え出された商品が投資信託なのです。

 

投資信託は、個人投資家から集めたお金をプロの投資家やファンドマネージャーが日本や海外の株式に投資して運用します。

それによって出た運用利益を投資家に分配すると言うシステムの商品です。

売る側にとってのデメリットはほとんどゼロ

預ける側の個人投資家は、自分はお金を預けるだけでプロの投資家が運用してくれるのだから安心感があります。

きっとうまくやってお金を増やしてくれるだろうという期待も持てそうな気がしますよね。

 

ところが、投資信託は、実は販売する側にとってのメリットがより大きい商品なのです。販売する側にとって投資信託というのは「新しい商品が売れるたびに手数料が確実に入る」という、手数料を稼ぐことが目的の商品だと言っても言い過ぎではないでしょう。

販売側には、運用実績に関わらず手数料が確実に入ってくるのですから、デメリットのまったくない商品なのです。

 

ここで投資信託を購入した場合の購入者(つまり、あなたかもしれない誰かです)にかかるコストについて見てみましょう。投資信託の手数料には3つの種類があります。

 

・販売手数料

・信託報酬

・信託財産留保額

 

わかりにくいと思うので、詳しく説明していきます。

 

まず販売手数料。

これは、購入時に販売会社に支払う手数料です。

金額は販売する銀行や証券会社によって異なりますが、おおむね投資額の1~3%のようです。

この最初の段階で、投資信託を販売する会社には自動的にそれだけの手数料が入る仕組みになっています。

 

次の信託報酬というのは、投資信託を保有している間、毎年信託している財産から差し引かれる「運用会社への手数料」です。

これはおおむね0・5~2・0%です。報酬というのは運用会社にとっての報酬ということで、購入者にとってはコストになります。

運用会社は信託報酬の一部を、運用を行うための人件費や、レポート発行費用に充当しています。(ここでも運用会社にとっては自前のコストはなしということになりますね)

 

三つめの信託財産留保額というのは、投資信託を解約する時にかかる手数料のことです。すべての投資信託にかかるものではありませんが、かかる場合には基準価格の0・1%程度差し引かれることが多いようです。

「中途半端な時期に解約する」ことに対する迷惑料という位置づけです。

 

以上3つが投資信託を購入した側にかかるコストです。実際にはどのくらいの金額になるのか考えてみましょう。

 

100万円の投資信託を始めた場合で考えましょう。

 

・販売手数料 約3% 最初に3万円が差し引かれます。

この時点で、実際の運用額は97万円でスタートということになります。

 

・信託報酬 1年後には、さらに約1・6% 約1・6万円が差し引かれます。

 

1年の間に3・0+1・6=4・6%が差し引かれるのですから、預けた額よりもお金を増やすためにはこの数字を上回る運用利回りが必要になります。そうでないと、手数料分のマイナスがそのまま残ってしまいます。

 

ここまで読んだ方は、投資信託のからくりにもう気付かれたでしょうか。

つまり、投資信託という商品は、銀行や販売会社が運用成績に関してまったくリスクをとらないしくみになっているのです。

投資信託の販売や運用に関わる人件費などのコスト、さらに企業利益までもあらかじめ手数料で回収しているのです。

 

販売する側は、販売した時点で確実にコストと利益を確保できています。

銀行などの販売会社にとっては「売った時点ですぐに」かつ「売れば売るほど」儲かる商品、それが投資信託なのです。

安定しているからこそ大きな利益は見込めない

一方、購入者側にとってのメリットはどこにあるのでしょうか?

もちろん運用が成功すれば、その利益は投資した側に分配されます。

高額の手数料を支払ってでも投資信託を始めようとする人は、それを上回る運用益を期待してのことだと思います。

 

ただ、投資信託の対象に選ばれるのは、マーケットからの高評価を得たものがほとんどです。

安定したマーケットではありますが、その分大きく「化ける」ことは望めず、大きな利益は期待できないことが多いようです。

その一方で、リーマン・ショックのような「急落」のリスクからは逃げられません。

 

どうでしょう?

投資信託は、個人投資家にとってはメリットが少なく手数料ばかりが高額な商品だと思いませんか?

お金を増やすどころか、かえって減らしてしまうかもしれない・・・そんなリスクのある金融商品を、自身のお金を増やすために選ぶ銀行員は、私の知る限りは一人もいません。

 

 

*この記事以外にもコラムをアップしています。その他コラムはインベスターズギルドのコラムサイトでご覧ください。http://investorsguild.jp/column/investment-trust/

 

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